研究概要 |
IES(inverted echo sounder:倒立音響測深器)は,海底に設置して海底と海面の間の音波往復時間を時間的に連続して測定する測器である。音波往復時間は,その場所の主水温躍層の上下動をよく反映するとされているが,最近の研究により,さらに音波往復時間が水温や密度の鉛直分布に変換できることが分かってきた。この変換方法は,GEM(gravest empirical mode)と呼ばれている。1993年から,四国沖で黒潮を横断しているASUKA側線上の,黒潮の沿岸側と沖合側の2地点で実施しているIESの連続観測によって,音波往復時間に関する記録が,約10年間にわたってほぼ連続して得られている。今年度は,このASUKA測線上の黒潮域で同時に実施された多くのCTD/XBT観測(観測船による水温・塩分の鉛直分布の観測)データから,これらの沿岸側と沖合側の測点に合わせて最も精度の高いGEMの変換テーブルを作成した。IESで観測された音波往復時間が,同時に得られたCTD/XBT観測データから計算で求めた音波往復時間とよく対応すること,GEMを使ってIESデータから求めた水温・塩分の鉛直分布から計算した海面力学高度が,CTD/XBT観測データから求めたそれとよく一致することなどを確かめた。しかし,同時に衛星海面高度計によって観測された海面高度の時間変化に較べると,IESデータから求めた海面力学高度の時間変化の振幅はやや小さかった。この不一致を現在検討中である。
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