研究概要 |
本年度は,係留計測中であったIES (inverted echo sounder:倒立音響測深器)を回収し,データの観測期間の延長を試みた。黒潮の岸側の観測点に設置されていた2系のIESは,海洋研究開発機構の淡青丸による東大海洋研究所の共同研究航海KT04-13によって両機ともに回収に成功し,2002年7月から2004年7月までのデータを延長した。ただし,黒潮の沖側の観測点に設置していた2系のIESは,残念ながら両機とも船上からの切り離しコマンドに応答がなく,回収することができなかった。 さらに本年度は,IESのデータ解析時に併用するための黒潮変動に関する知見や,結果の対比に用いるためのデータセットの整備を行った。まず,前述の淡青丸KT04-13次航海において,四国沖ASUKA測線においてCTDおよびLADCP観測を行い,黒潮を横切る断面の密度場および流速場の鉛直的な構造を計測し,IES観測からGEM (gravest empirical mode)法を用いて求める傾圧密度場が,流速場とどのように対応するかについての知見を深めた。また,衛星海面高度計データと漂流ブイ観測を用いて海面での絶対流速場を記述し,黒潮流軸の位置変動を記述することで,黒潮に対してどのような場所でIESが観測を行っているかの情報を得ることに成功した。さらに,海面高度計と沿岸潮位のデータ解析を行ったところ,沿岸水位が黒潮の変動と良い対応関係にあることが判明した。このため,今後,沿岸側のIESデータと黒潮変動との対応関係をより詳細に調べる予定である。
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