研究概要 |
「中層大気大循環モデル国際比較計画(GRIPS)」の「太陽活動の影響の比較実験」結果とベルリン自由大学が行った赤道域の中層大気の東西風を現実に近づくように補正したモデル実験の結果をベルリンを訪問して共同で解析した。この結果、モデルの応答は成層圏界面付近の循環場の再現性に大きく依存している可能性が明らかになった。また、同大学から共同研究者の招聘を行い太陽活動の変化により成層圏界面付近で生み出された変化が、波と平均流の相互作用を通じて北半球の冬の高緯度の地表に及ぶプロセスを共同して調べた。 米国大気研究センターとマックスプランク気象研究所を訪ね光化学モデルに対する情報の収集を行った。そして、気象研究所3次元光化学輸送モデルを太陽紫外線のスペクトル変化を反映し長期間の輸送に耐えられるよう改善した。このモデルを用い、太陽活動による子午面循環の変化を気象場のデータ同化で取り入れた上で、オゾン・メタン・フロン等の分布における太陽活動極大期と極小期との差を調べた。その結果、太陽紫外線の増加に伴い上部成層圏においてはオゾンが2-5%増加する一方、中間圏ではオゾン・メタン・フロンの減少傾向が見られた。 太陽11年周期変動に伴う紫外線およびオゾンの変動の力学的な効果と放射的な効果を評価するために、力学加熱固定モデルと、大循環モデルを用いて実験を行った。この結果、低緯度、中緯度の成層圏界面付近に最大値を持つ上部成層圏の昇温域は放射効果であることが確認できた。さらに、観測で見られる低緯度下部成層圏の弱い昇温は力学効果であることがわかった。 以上の研究成果を発表する為にIUGG,AGU等の国際集会に参加する一方、GRIPS,SOLICE,SPARCの会議に参加し太陽活動の影響に関する国際な共同研究の推進に寄与した。ベルリン自由大学との共同研究成果の一部は米国地球物理学連合の雑誌に論文として出版された。
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