研究概要 |
(1)太陽風速度と起源領域の磁場強度・磁束管構造の比較研究 太陽風の速度を決定する起源領域の物理量を特定するために,IPS観測により求めた太陽風構造と太陽光球面磁場観測データ,太陽コロナ中の磁束管拡大率の比較を行った。今回用いたデータは太陽活動極小期である1995年〜1996年のものを利用した。その結果,太陽速度(V),光球面磁場(B),磁束管拡大率(f)の間に,極めて高い相関(相関係数0.9:V^2∝(B/f)^2があることを発見した。これにより太陽風速度のモデル構築の重要な手がかりが得られた。本結果は,American Geophysical Union秋季大会にて発表を行っており,現在論文執筆中である。 (2)CME現象の解析 2003年10月末〜11月初旬にかけて連続的に発生した,大規模なフレアとそれに伴うCMEは,地球磁気圏に大きな影響を及ぼした。我々のIPS観測装置もこの期間に発生したCMEによる惑星間空間の擾乱を多数捉えており,モデルフィッティングにより,3次元的な空間構造の推定を行った。また同一の活動領域で発生したにもかかわらず,惑星間空間の擾乱に発展しないCMEが数例見つかった。これは直前のCME通過により惑星間空間が一時的に極めて低密度になったため,惑星間空間衝撃波の形成が十分に行われなかったためではないかと考えられる。本結果は,2005年フランスで開催されるCOSPAR会議で発表予定である。 (3)高緯度高速風速度の距離依存性の研究 IPS観測のデータを0.13-0.3AU,0.3AU以遠に分け,それぞれの速度構造を求めることで,高緯度から吹き出す高速太陽風速度の太陽からの距離依存性を調べ,他の観測機器の結果と比較した。その結果,高速太陽風は20太陽半径でほぼ終端速度に到達するが20-30太陽半径以遠でも非常に緩やかな加速が続き,太陽からの距離にしたがい徐々に小さくなっていくことが明らかになった。本結果は,Journal of Geophysical Researchに論文が受理された。
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