研究概要 |
(1)太陽風速度と起源領域の磁場強度・磁束管構造の比較研究 前年度までに行った,太陽風の速度,光球面磁場強度,コロナ中の磁束管拡大率の間に見つかった関係,V=f(B/f)をさらに詳細に調べた。太陽活動極小期である1995〜1997年の3年間にわたる太陽光球面磁場データを小領域に分割し,各小領域から惑星間空間に広がる磁束管を求め,惑星間空間シンチレーション(IPS)により求められた太陽風分布との比較を行った。その結果,上記関係式は依然として高い相関係数のもと成立していることが明らかになった(相関係数0.7以上)。また,本研究により得られた関係はまだ定式化されていないが,他の研究者による理論的研究の結果と同様の傾向を示していることが判明した。今後,観測と理論の両面から研究を行う必要がある。 本研究結果については現在論文執筆中であり,また,H17年度に開催される太陽風国際会議にて発表する予定である。 (2)CME現象の解析 太陽コロナの物質が大量に惑星間空間へと放出される現象(太陽コロナ放出現象:CME)は惑星間空間に擾乱を引き起こし,地球到達時には様々な電磁気的な障害を引き起こすことが知られている。しかしながら,人工衛星の観測のみでは,CME伝搬の広がりや速度の変化を知ることは極めて困難である。これは人工衛星による観測点が限られていることに起因する。我々のグループでは,IPS観測によるリモートセンシングデータを拘束条件として,CMEの広がり,速度,歪みといった様々なパラメータを求めることでその性質を研究している。今回はCMEの惑星間空間での速度の変化(主に減速の様子)を調べた。その結果,太陽から距離が離れるにつれ,減速は緩やかになっており,0.6AU以遠では,ほぼ等速度で伝搬していることが明らかになった。この結果は,CMEとその前面にある太陽風との相互作用によるものと思われる。本研究成果は現在論文執筆中である。
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