研究概要 |
平成17年度は昨年度と同様,常磐地域の古第三系岩城層,房総半島地域の第四系常総層の地質調査を実施するとともに,中国黒竜江省鶏西地域の下部白亜系の地質調査を行った。特に,岩城層においては,全体として大きく海進していく過程で形成された礫質河川堆積物について,6つの階層性をもつ地層境界面を認定し,この地層境界面の空間的連続性の特徴から3つのチャネルベルトユニットが認定された。個々のチャネルベルトユニットは堆積シーケンスに相当するが,従来のシーケンスモデルと異なり,シーケンス境界を挟んで河川システムのうち,河川の形態や規模が大きく変化していないことが明らかとなった。したがって,全体として海進する過程で古河川水文学的特徴に大きな変化が発生しない場合のあることが明らかとなった。 一方,海成層を挟在する鶏西地域の河川堆積物の場合,海進にともなって氾濫源堆積物の層厚や頻度が増加し,河川流路堆積物の層厚が薄くなる傾向が認められる。その結果,古河川水文学的特徴のうち,年平均流量が減少し,屈曲度が増加する傾向が認められた。これは,下部から手取型植物群が,上部から領石型植物群が特徴的に産出し,下部ほどより湿潤な環境で形成されたことと調和的な結果である。また,手取層群の河川堆積物から復元される古河川水文学的特徴と鶏西地域の下部白亜系のうち手取型植物群で特徴づけられる河川堆積物の特徴から復元される古河川水文学的特徴がほぼ同じ値を取ることが明らかとなった。したがって,前期白亜紀においては,アジア大陸東縁部における古河川水文学的特徴には広い範囲での共通性が存在していた可能性が考えられる。
|