研究課題
本年度は昨年にひきつづいて風化花崗岩斜面地下水の湧水の量、電気伝導度の観測を行うとともに、新たに表層すべりの変位速度と降雨との関係の調査を行った。昨年度は湧出水の化学組成変化を追跡するために、主に手作業による採水と流量測定を行い、降雨に対する化学組成変化を解明して、それに基づいて地中の水の浸透挙動の作業仮説を得た。本年は、それを確証するために、計測を自動化して行った。その結果、降雨に対する地下水の応答特性が明確になった。すなわち、降雨時にはまず短絡路を通って雨水が直接地下水面に達し、その後土中水が下方に押し出され、その後に雨水が地下水面に達することが初めて明らかになった。また、この現象が降雨の度にくり返されていることが明らかになった。表層に設置したテンシオメータ測定結果からは、雨水が通常浸透しないと考えられていたDH級のマサにも降水がいち早く浸透することが明らかになった。この浸透水の浸潤フロントが下降して不飽和帯の空気圧を高め、その結果土層水が押し下げられ、上述の地下水面に至ったと解される。上記の地下水と土壌水の観測とともに、表層すべりを起こしかけている土層の変位を伸縮計によって観測した。その結果、7ヶ月間で3mmの変位が観測され、特に乾燥と湿潤の変化が大きな時に変位が大きく、特に正の圧力水頭が発生しなくても変位が徐々に進むことがわかった。以上の結果は、風化花崗岩斜面の安定性についての考え方に基本的修正を迫るものであった。
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