南海地震は歴史記録によってこれまで100年-200年程度の繰り返し間隔をもって活動してきたことが知られており、世界で最も歴史的活動記録を残している地震である。近年の室戸岬の地形学的研究により、南海地震とは異なり数千年の周期をもつプレート内地震によって室戸岬の隆起地形が形成されたのではないかという仮説が提唱されている。もしこの仮説が正しいのなら、室戸半島とは対称的に地震により沈降活動が行われる須崎地域の過去数千年の堆積物記録中にこのプレート内地震が含まれているはずである。本研究の目的はこの過去4000年間の津波記録を詳細に調べ、歴史記録より古い地震の再来周期を明らかにするとともに、この地域の地盤の変動を推定し南海地震と推定されるプレート内地震の活動を評価することにある。具体的には津波堆積物層の同定およびそれぞれの層順の年代値を決定することを主体として研究を進めている。 2年計画の初年度である本年度は、13年度に科研費で作製した新型バイブロコアラーを用いて約4.5mの試料を3本採取し、それぞれの試料中の津波堆積物層を対比・同定し、年代測定をおこなった。平常時の淡水性の泥の堆積物には年代測定に使用できる試料が乏しく、津波によって運ばれた砂層中の貝殻片や木片等の年代は再堆積となるため年代値がばらつく。従って、正確な年代を知るためには、何よりも数多く年代測定を行うことが不可欠であり、本年度の予算はすべてを年代測定にあてた。その結果、1200年前から3800年前までの堆積物中に12層の津波堆積物を確認することができた。それぞれの層準はほぼ100年から200年の間隔を持っているが、2箇所ほど大きく堆積環境が変化したとおもわれる層準を見出すことができた。これがどのような変化を意味しているかまだ明らかではないが、来年度さらに詳しい津波堆積物層の対比と年代測定を行うことによって解明したい。
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