研究課題
基盤研究(B)
地震発生の直前に震源断層深部では準静的なすべり核が成長発達して、そして動的破壊へと至るものと一般に推測されている。しかしすべり核の成長過程における剪断帯の構造発達過程、間隙水圧変化などはよくわかっていない。そこで地すべり地帯を巨大な剪断試験機に見立てて、すべり核の動態およびすべり面の物質解析を計画している。本年は高知県吾川郡吾北村打木の地すべり地帯を対象に、精密動態観測及びすべり面コア採取を行った。この地すべり地帯は、防災監視を目的とした長インターバル(約1ヶ月おき)の観測によって通常は停止しており、高降雨時に約数mm〜数cm移動した後停止するという活動を繰返すことがわかっている。そこで2003年8月の高降雨時に孔内傾斜計および孔内水位計によって精密動態および間隙水圧変化観測を実施した。その結果、降雨数時間後に地下水位の上昇が始まり、地すべり地塊中腹部の観測孔は、すべり面付近幅数mにわたって山側に傾斜し、その後すべり面粘土層下部が48時間以上かかって約5mm移動したことが観測された。これはすべり活動初期において、すべり面付近が間隙水圧の上昇に伴ってダイレータンシーを引き起こし、最終的には歪みの局所化を引き起こした過程を精密に観測したものと解釈される。このようなすべり面の動態と変形組織および物性値との対応関係を明らかにするために、間隙水圧が十分に低下した冬期にボーリングを行い、深度約30mで厚さ50cm程度のすべり粘土層が採取された。現在X線CT、γ線透過量、帯磁率、伝導度、間隙率、粒子密度等分析中である。