研究課題/領域番号 |
15340174
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
千葉 聡 東北大学, 生命科学研究科, 助教授 (10236812)
|
研究分担者 |
加瀬 友喜 国立科学博物館, 地学研究部, 室長 (20124183)
河田 雅圭 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 教授 (90204734)
山崎 和仁 神戸大学, 理学部, 助手 (20335417)
|
キーワード | 多様性 / 適応放散 / 種分化 / 変異 / 形質置換 / 小笠原 |
研究概要 |
ミトコンドリアDNAの解析により、関東-東北地方に分布するマイマイ属陸貝では、隆起や海水順変動、氷期の寒冷化などに伴う集団の縮小、拡大、さらに供給地からの繰り返し移住と巻き方向の異なる異種間の雑種化により、著しく複雑な遺伝的変異の構造が成立したことを示した。伊豆諸島のマイマイ属の起源を遺伝的に解明し、いずれの島の集団も伊豆半島南部に由来すること、島で顕著な多型が出現したことを明らかにした。喜界島の陸産貝類の化石記録と、テクトニクスと海水準変動により予想される島の面積変化の関係を解析し、島の面積の拡大が種多様性の増加の最も重要な要因であることを示した。小笠原諸島のカタマイマイ属の系統解析から、小笠原の陸貝の適応放散は生態学的な要因がその分化に関与している可能性を示唆した。さらに分布の拡大に伴って生じた雑種化の過程では、いずれの親種とも異なる極端な形態をもつ個体が雑種化により飛躍的に生じたことを示した。異質な環境の接点である潮間帯の巻貝と寄生虫の関係に注目し、両者の系統関係を推定したところ、吸虫類寄生虫に多数の同胞種が存在し、水深や高度に応じて寄生率が変化することが示された。以上の成果から、新しい環境への進出の過程で、大きな表現型や生態的性質の変化が生じうること、また急速な種分化が起こりうることが示された。このことは、適応放散のプロセスには、新しい環境への進出や、環境変化による絶滅、新しい環境の生成が大きく関わっている可能性を示唆している。
|