研究分担者 |
川幡 穂高 東北大学, 理学研究院(産業技術総合研究所), 教授 (20356851)
酒井 治孝 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 教授 (90183045)
岡田 尚武 北海道大学, 理学研究院, 教授 (80111334)
山中 寿朗 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 助手 (60343331)
桑原 義博 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 助手 (90281196)
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研究概要 |
本年度は,北海道の白金川流域に分布するセノマニアン階からチューロンニアン階の地層の調査を行った.最初に両岸にロープを張り,河川域全体のスケッチを行い,境界付近のすべての岩石をブロックで採取した.本地域の岩相は,下位より砂岩泥岩互層,泥岩優勢の砂岩泥岩互層,シルト岩の順に累重する.セノマニアン階の地層は,黒灰色で比較的大きな生痕が観察されるが,チューロニアン階になると岩石が緑灰色になり,細かい生痕(コンドライト様生痕)が多いという特徴がみられる.また,境界付近になると数cm程度の凝灰岩が頻繁に挟まれるようになる.イノセラムスなどの軟体動物化石は,セノマニアン階にはときおり産出するが,チューロニアン階には殆ど含まれなくなる.以上のように,本年度の調査の結果からセノマニアンとチューロニアン階の境界を挟んで岩相が大きく異なることが再認識された. また,本年度はテーチス海のOAE1b(パキール)層準の化石相の解析を行った.パキール層から採取した175cmのコア試料を1cm間隔で,ナノ化石,浮遊性有孔虫,底生有孔虫,放散虫などの化石の分析や個体数の計測,石英粒子,植物片,パイライト粒子などの堆積粒子の数を計測した.その結果,浮遊性有孔虫の個体数は葉理の発達する部分では多く,葉理のない部分では10分の1以下と少なくなることが明らかになった.また,放散虫や植物片も葉理のある部分で増加する.これに対して,ナノ化石の産出は,葉理の有無にかかわらずパキール層全体で低くなる.底生有孔虫化石も葉理中には殆ど産出しない.このことから,黒色頁岩のうち,葉理の発達する層準では,浮遊性有孔虫などの動物プランクトンの生産量が上昇し,海底下に多くの有機物を供給したため,底層の酸素が消費され貧酸素状態になったと考えられる.
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