研究分担者 |
岡田 尚武 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80111334)
酒井 治孝 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 教授 (90183045)
川幡 穂高 東京大学, 海洋研究所, 教授 (20356851)
山中 寿朗 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 助手 (60343331)
桑原 義博 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 助教授 (90281196)
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研究概要 |
白亜紀は地球温暖化が進行した時代で,高緯度地域における表層・深層水温の上昇,両極地域での氷床の欠如など、現在の海洋とは大きく異なった海洋環境が広がっていた.この時期を特徴づける事件として大量の有機物を堆積させた海洋無酸素事変(Oceanic Anoxic Event ; OAE)が生じている.本研究では太平洋(北海道蝦夷層群およびアメリカ西海岸)とテーチス海(南西フランス)の3地域にみられる無酸素事変を選び,その堆積物を高解像度で分析しその結果を比較・検討した. 太平洋型は,砕屑物を主体とするためテーチス海型のように黒色頁岩は観察されない.しかし,両地域において炭素同位体比の正のスパイクが観察され,またTOCの量が増加する共通性がみられた.但し,アメリカではOAE1aの層準は欠如している.炭素同位体比のスパイクが観察される層準の付近では,底生有孔虫の群集が膠着質の群集に変化することも見い出された. 北海道の無酸素事変の層準(OAE2)では,黒色頁岩や葉理構造は観察されないものの,生痕化石の大きさや密度が減少し,明らかに底層の環境が悪化したことを示す.これに対し,テーチス海の無酸素事変(OAE1a,1b,2)では微化石の欠如や明瞭な葉理構造などが観察され,典型的な貧酸素環境を示す.このように,両者の地域の比較から,無酸素事変は全海洋でほぼ同時に生じているが,その程度は地域によって異なることも明らかとなった.
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