研究概要 |
トカゲ目はイグアナ下目と四肢の退縮傾向を示すScleroglossaに大別されると考えられるが,Scleroglossaに含まれる下目間の関係は明らかになっていない.これまで明らかになっていなかったトカゲ目下目間の系統関係,特に四肢が退化したヘビ類・ミミズトカゲ類の系統的位置を解明するために,ミトコンドリアDNA塩基配列に基づく分子系統解析を行った.本研究において,従来データが不足していたヤモリ下目とミミズトカゲ類で16SrRNAからCOIIIまでのおよそ8kbpの塩基配列を決定した.今回決定できたヤモリ下目とミミズトカゲ類に加えてイグアナ下目,トカゲ下目,ヘビ類の配列を用いて近隣結合法・最節約法・最尤法で系統解析をおこなったところ,いずれの方法で解析をおこなった場合にも,今回解析に用いた現生トカゲ目の中でヘビ類が最も早く分岐し次にミミズトカゲ類が分岐したことが示唆された.さらにイグアナ下目とトカゲ下目が近縁となり,イグアナ下目がScleroglossaの一部から派生したものである可能性が示唆された.この結果について第26回日本分子生物学会年会で発表した.また,米テキサス大学オースチン校で,モササウルス類の姉妹群にあたる海生爬虫類のCTスキャン,3次元モデル化を行い,手取層群桑島層(石川県白峰村)のトカゲ類との比較をおこなった.アメリカ自然史博物館,ミラノ自然史博物館,ロンドン自然史博物館などに所蔵される比較標本と形態学的な検討をおこなった結果,手取層群の標本は,白亜紀前期のアジアの淡水域から産出したにも関わらず,白亜紀後期のヨーロッパから産出する海生爬虫類に近縁である可能性が示唆された.
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