研究概要 |
花崗岩貫入岩体の固結に伴い,マグマから分離したマグマ水は高濃度の塩化物水溶液で,炭酸ガスなどの気体成分や重金属濃度も高濃度であり,このような溶液が鉱床の生成に密接に関与していると考えられている。今年度はマグマから分離した熱水が関与して生成した鉱床について以下の研究を行った。 マグマ水や鉱床の生成に関与した熱水の化学組成とりわけ重金属濃度を知ることは,本研究では重要である。鉱床母岩や脈石鉱物中の流体包有物は,これらの熱水をトラップしていると考えられるので,放射光蛍光X線法で単一流体包有物の分析を試みた。チリ北部の斑岩型銅鉱床産流体包有物からはCu, Fe, Zn, Mn, As等が検出され,マッピングによりこれらの元素の包有物中での分布を明らかにすることができた。しかしながら定量分析を行うには母結晶によるX線の吸収の効果を経験的に求める必要がある。このために石英母結晶中にCuおよびZn濃度既知の流体包有物を合成し,母結晶表面からの深度,CuおよびZn濃度,蛍光X線強度の関係を求める検量線を作成する実験を行った。X線の吸収の補正係数は試料表面からの深度の指数関数として表されることから,X線強度と深度を対数プロットすることにより補正曲線が得られ,検量線をほぼ確立する事ができた。 北部北上帯に位置する変成層状マンガン鉱床に伴われるマンガン珪酸塩鉱物の酸素同位体比から,マンガン鉱床の熱変成機構の特徴を解明した。本鉱床は花崗岩体直上のルーフペンダントに位置し,花崗岩貫入時に高度の熱変成を受けており,マグマから分離した熱水の影響の痕跡があると期待される。鉱床内のごく近い位置に存在するマンガン鉱物間で酸素同位体の分配は平衡に達していない事が明らかとなった。熱変成はマグマ水のような流体が殆ど存在しない環境で起こったことを示峻する。
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