研究概要 |
電気伝導度測定とX線回折実験が同時に可能であるようなダイヤモンドアンビルセルを設計、製作し、直流二端子法による電気伝導度測定のための電気回路、GPIB経由でのデータ取り込みのコンピューターシステムを構築した。その後、製作したダイヤモンドアンビルセル、電気回路システムの動作を確認し、現有するX線回折実験装置を使った圧力をモニターするシステムの同時稼動を調整、整備した。 今回、開発した装置を使うことによって、マグネタイトFe_3O_4とウルボスピネルFe_2TiO_4を端成分とする固溶体Fe_<3-X>Ti_XO_4のx=0.3,0.56,0.73,0.96,0.99である単結晶を合成したものを試料にして、電気伝導度の圧力依存を調べた。 電気伝導度の組成依存性に関しては、Tiの固溶にともなって電気伝導率は急激に下がった。これはBサイト間のFe^<2+>,Fe^<3+>のホッピングが導電機構であるためで、TiがBサイトに固溶していくことによるホッピングペア、経路の減少によると解釈できる。 電気伝導度の圧力依存性に関しては、最初、電気伝導率は圧力の増加に伴って指数関数的に増大した。これは圧力によりBサイト間の距離が短縮したことにより、効率的にホッピングが起こっているためと考えることができる。しかし、ある圧力になると電気伝導率は突然、圧力に依存しなくなり、圧力値は、Tiの固溶に伴って、低圧側にシフトする傾向にある。この電気伝導度の変化が構造的要因によるものと考えて、X=0.99の試料を用いて、放射光施設PFにて高圧下での粉末回折実験を行った。その結果、電気伝導率の変化が観察される圧力で、いくつかの回折線がダブレットに分裂し、相変態が起こっていることがわかった。高圧相の構造の詳細は検討中であるが、対称性が立方晶系から正方晶系になった構造相転移であると考えている。この相転移は可逆的であり、二次相転移の可能性が高い。
|