電気伝導度測定とX線回折実験が同時に可能であるようなダイヤモンドアンビルセルを設計、製作し、直流二端子法による電気伝導度測定のための電気回路、GPIB経由でのデータ取り込みのコンピューターシステムの構築した。注意する点として、実際には電気伝導度はサンプルの大きさに大きく依存するため、基本的には電気伝導率が測定されており、伝導長さの圧力変化をどのように測定するかは今後の課題である。 今回、マグネタイトFe_3O_4とウルボスピネルFe_2TiO_4を端成分とする固溶体について、いくつかの組成の単結晶を合成したものを試料にして、本科学研究費補助金を使って開発した電気伝導率・X線回折同時測定装置を使うことによって、電気伝導度の圧力依存を測定すると同時に、X線回折パターンの測定によって電気伝導率の変化と構造変化の関係について調べた。 その結果、いずれの試料についても、ある圧力になると電気伝導率は急激に圧力依存性を示さなくなり、その変化が起こった圧力値はマグネタイトでは24GPaであったが、Tiの固溶に伴って低圧側にシフトし、ウルボスピネルでは6.5GPaであった。そして、その圧力でX線回折パターンにおいて、いくつかの回折線が分裂しダブレットになっており、相変態が起こっていることがわかった。回折パターンの解析と、ウルボスピネルの圧力下における単結晶構造解析から、この相変態は対称性が立方晶系からMn_3O_4型の正方晶系になった構造相転移であることがわかった。この相転移は可逆的であり、二次相転移の可能性が高い。 今回開発した装置によって、物性(電気伝導率)の変化と構造変化の因果関係が直接的に議論できるようになったことは、今後のこの分野の展開に重要な意義を持つと思われる。
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