研究課題
鉱物-塩化物水溶液間における多元素同時分配実験のひとつとして今年度は黒雲母を対象に実験を行った。昨年度、鎖状珪酸塩であるヘデン輝石と透閃石を用いて実験を行った結果、Coに関して鉱物に濃集しにくい負の分配異常が認められた。この異常がSiO4四面体の重合に関連していることが予測されたため、さらに重合の進んだ層状珪酸塩である黒雲母でどのような挙動を示すか知るために実験を行った。実験は金雲母を対象とした。金雲母が安定となる水溶液中のK/Mg比を求める実験を行った結果、700℃、1kbの条件下ではK/Mg比が0.75以上で金雲母が安定になることが判明したので、2価金属同時分配実験では塩化物水溶液中のKイオンと2価金属イオンの比を0.75とした。実験ではNi、Mg、Co、Zn、Fe、Mn、Ca、Srに対する同時分配を調べた。実験にはコールド・シール型高圧反応容器を用いた。実験温度は、500〜800℃とし、圧力は1kbとした。反応期間は3〜10日間とした。塩化物水溶液はICPを用いて、固相はEDSを用いて組成分析を行った。分析結果からイオン半径-分配係数図を作成し、考察を行った。実験の結果、ZnとCoに負の分配異常が認められた。Znに関しては6配位席に共通に認められる現象であり、これはZnが6配位席を好まず、4配位席を好む性質による。Coに関しては予想通りであり、これはSiO4四面体の重合による可能性を示唆している。そこで、中性溶存種濃度を熱力学的データに基づき計算により求め、亜鉛に対する分配異常に対するコバルトの分配異常比を求めた結果、カンラン石(分配異常を示さない)<ヘデン輝石<透閃石<金雲母の順となり、このようなCoの分配異常がSiO4四面体の重合度に比例しており、その重合度がCoの分配異常にかかわっている可能性が高いことが分かった。
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岩石鉱物科学 33
ページ: 151-162
Resource Geology 53
ページ: 155-162