研究概要 |
本研究では高分解能二次イオン質量分析計を用いた年代測定法の問題点を,新たなジルコン標準試料作成法を開発することで解決すると同時に,分析領域の微小化を試み,ジルコンに保持されている化学的情報と年代を高空間分解能で解析できる技術を確立,それを世界最古の岩石に応用することを目的とし研究を進めた.本年度は産地の異なる宝石用ジルコンを購入し,SEM,カソードルミネッセンス,汎用二次イオン質量分析計,高分解能二次イオン質量分析計を用いて,その均質性の確認を行った.標準試料に適した試料を1mm^3以下のサイコロ状に切断し,互いに隣り合ったジルコンの一方を二次イオン質量分析用の標準試料とし,他方をU-Pbスパイクを添加・分解・イオン交換樹脂による化学分離を行い,表面電離型質量分析計を用いた精密なPb同位体組成と同位体希釈法によるU・Pbの濃度の決定した.またこの過程において生成したジルコン分解溶液を分取し,ICP-MSによって約50元素の定量分析を行い,汎用二次イオン質量分析計によるジルコンの微量元素測定用標準試料作成を実施した.さらに高分解能及び汎用二次イオン質量分析計用の超高真空高焦点深度反射顕微鏡システム(PMLopt-1)を発注し、2台の二次イオン質量分析計に装着・調整を行った.その結果、本研究で目標とした5ミクロン以下の空間解像度でジルコンの分析が可能となり、薄片試料中の極微小ジルコンを対象とした年代測定を実施するための基礎が完成した.この空間解像度は従来に比べ4倍以上改善しており,その結果ジルコン分析以外にも,その高空間解像度二次イオン質量計分析に応用可能であり,非常に大きな成果といえる.
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