白金族元素は宇宙化学的には難揮発生元素に、また地球化学的には親鉄元素に分類され、地球のような分化した惑星では中心核に集中しており、そこでの元素濃度は太陽系の元素組成に等しい組成をもつと考えられる。一方、地球のマントルや地殻に相当する、主としてケイ酸塩から構成される部分における白金族元素の濃度は非常に低く、また、元素間の組成も太陽系の元素組成から大きく変動していることが知られている。本研究では、種々の分化した限石のうち、おもにケイ酸塩からなる隕石に注目し、その微量白金族元素を精度良く定量し、そのデータをもとにそれら分化した隕石が形成された過程を考察することを目的とする。白金族元素の定量には誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)法を用い、他の主成分、微量成分元素をいくつかの放射化分析法を組み合わせて定量した。平成17年度は平成16年度に引き続いてHEDグループに属するユークライト隕石をとりあげ、それに加えて石鉄隕石の一つであるメソシデライト隕石のケイ酸塩部分を分析対象とした。その結果、ユークライト中に認められる白金族元素は鉄限石由来であることが分かった。また、メソシデライト中の白金族元素は、鉄隕石が溶融して、鉄-硫化物の溶融体として分離したものがケイ酸塩中にしみ込んだものであろうと考えられた。明らかに、衝突によるメソシデライトの起源を示唆するものである。これらの研究と平行して、CIコンドライト中の白金族元素存在度を正確に求め、種々の隕石中における白金族元素存在度をより正確に表現するための基礎的データの取得も目的として研究を進めた。
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