研究概要 |
消滅核種は、太陽系形成時には存在していたが、半減期が短いために46億年経った現在では壊変し尽くして存在しない核種であるが、隕石中にその痕跡が発見される場合があり、初期太陽系年代学に利用されている。筆者らは普通コンドライトであるBeardsley隕石から消滅核種Cs-135(半減期230万年)によると考えられるBa-135の明確な同位体異常を世界で初めて発見した(Hidaka et al.,2001)。平成16年度は、まず、質量分析計の測定用アンプ部分のアクイジションユニットを購入、既存のものと交換し、測定精度の向上を行った。その後、昨年度に引き続きコンドライトを中心にBa同位体の分析を続けた。このうち、CRグループに属する新発見のNWA801隕石(暫定名)からBa-135の正の同位体異常が見つかった。同時にBa-137の正の同位体異常も見られるため、これはr-過程元素合成により生成された成分である可能性が高い。一方、COグループに属するKainsaz隕石では誤差が大きいがBa-135のみに正の同位体異常が見られ、Cs-135による異常と考えられる。熱変成度の高いCKグループに属するKaroonda隕石でははっきりした同位体異常が見られず、隕石母天体上での変成作用により均質化した可能性がある。炭素質隕石の他、普通コンドライトでCs-135の痕跡が発見されているZag隕石の構成成分の分離を行っており、今後、順次同位体比を測定する予定である。
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