隕石、特に始原的なコンドライトは、太膓系が形成されたとき最も初めに固化した物質の集まりであり、その後、全体が溶融することなく保存されてきたため、原始太陽系の情報をそのまま留めている。消滅核種は、太陽系形成時には存在していたが、半減期が短いために46億年経った現在では壊変し尽くして存在しない核種で、隕石中にその痕跡が発見される場合があり、初期太陽系年代学に利用されている。本研究は、Beardsley 隕石からBa 同位体異常として痕跡を初めて発見した消滅核種Cs-135(半減期230万年)の検出とこれを用いた年代測定法の確立を目的とする。本研究では、炭素質コンドライトを中心に多くの種類の隕石についてBa 同位体の分析を行った。測定した炭素質コンドライトのうち、CI、CM、CRおよびCVグループに属する隕石のほとんどからBa-135とBa-137の同位体異常が見つかった。これらはs-過程やr-過程の元素合成過程により生成された成分が付加されているためと考えられる。一方、熱変成度の高いCKグループやエコンドライトでははっきりした同位体異常が見られず、隕石母天体上での火成・変成作用により均質化した可能性が高い。CMグループの隕石について、r-過程成分を補正し、Cs-135による年代を推定すると、約7(+5/-2)百万年という年代が得られた。これは、消滅核種Mn-53を利用したCI隕石中の炭酸塩の年代に比べて短いため、同位体の再分配が起こった可能性が考えられる。炭素質コンドライトでは普通コンドライトに比べて酸によるCsの選択的溶出は効果的ではなかったが、消滅核種Cs-135による同位体異常の検出には有効であると考えられる。多くの炭素質コンドライトでは核合成過程由来の同位体異常が見られるため、詳細な研究による今後の廃展が望まれる
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