新規低温プラズマラジカル照射法のため、ホロー効果を併せ持つ円環型高周波マグネトロンプラズマ源を構築し、プラズマ生成実験並びに薄膜形成実験を行った。 1.リング状磁力線分布によるマグネトロン型磁界閉込めや、狭口径ホロー効果による静電閉込めによって、高密度プラズマが高効率で生成されることが分かった。グリッドを用いた電子温度制御や、用いなくてもプラズマ源磁場による磁気フィルタ効果により、低電子温度プラズマが下流側に形成されることが分かった。 2.成膜実験の結果、低電子温度プラズマ中ではナノサイズの微粒子が発生することが分かった。その形状が正四面体の正三画形を基本とす多面体の結晶構造をとる。高電子温度プラズマ中では、シート状のアモルファスグラファイトから成るナノウオール構造を形成することが明らかになった。 3.結晶成長の違いとして下地薄膜のsp2/sp3比の不規則性が考えられる。比が大きければsp2をもつグラファイト多層構造が3次元的に成長する。比が小さければsp3をもつダイヤモンド構造が3次元成長する。低電子温度プラズマ中ではCH2/CH3比が小さく、sp3を基本とする結晶構造の成長が考えられる。 4.電子温度が高いと基板入射イオンエネルギーが大きく、発生や結晶成長がダメージを受け、アモルファス状になる。電子温度が低いと結晶サイトへのマイグレーションが促進され、多面体的なナノ結晶粒子が形成される。 以上のように電子温度低温化によりラジカル組成比が変化し、結晶核の発生やナノ構造形成に極めて有効となることが分かった。
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