研究概要 |
本研究の目的は代表研究者自身が世界で始めて見出した共晶合金系の均一液相に発生する巨大な揺らぎ構造の広範な系における実在の検証とその構造の詳細解明である。"深い共晶系"Au-Si,Au-Ge,Ag-Si,Ag-Ge系、および、1系に複数の共晶点を持つ"複数共晶系"、Cd-Sb,Zn-Sb,およびBi-Te系液体合金の電気抵抗の精密測定を実施し、揺らぎ構造の存在の検証、および、体積分率の評価を実施した。"深い共晶系"については揺らぎの微視的構造解明のため、EXAFS実験をSpring-8において実施し、揺らぎの存在を支持する結果を得た。しかし、他機関施設申請利用では採択状況に左右されるため、従来からの電気抵抗法を推進し揺らぎの体積分率の評価に成功した。"複数共晶系"に対しては、従来から報告されている金属間化合物組成における電気抵抗異常をいずれの系においても否定し、ほぼすべての共晶点近傍の均一液相において揺らぎの存在を検証した。この揺らぎは固相変化における2固相析出のミクロな前駆現象であること、および、均一液相の過冷却を妨げるとの見解が得られた。共晶点近傍の液体は、従来、過冷却し易くガラス形成能が高いと盲目的に考えられてきた。文献の均質核生成実験結果の再検討から「共晶組成の液体は過冷却しない」という実験例を見出した。さらに"深い共晶系"Au-Ge系について過冷却実験を実施し、本研究者のこの見解を支持する結果を得た。この従来の迷信を打破する「共晶組成で過冷却しにくい」という事実は、均一液相における揺らぎ構造の存在を強く支持している。大規模シミュレーションによる揺らぎ構造の詳細な解明を実施すること、および、イオン系、水溶液系などにもまたがる多様広範な共晶系全般に揺らぎが存在するという普遍性の探求が今後の課題である。すでにその端緒となる結果が得られている。
|