研究概要 |
いくつかの有機ケイ素化合物の励起状態動力学を、ナノ秒レーザーホトリシス法、蛍光法を用いて研究し、その特徴を明らかにした。 1)シリル置換ナフタセンのようにケイ素原子がシリル基として含有された揚合、Si-C結合のσ電子と芳香環のπ電子系の相互作用により、蛍光の量子収率が増大するのに対し、9,10-ジヒドロ-9-シラフェナントレン誘導体や9-シラフルオレン誘導体のようにケイ素原子を環内に含有する化合物では、炭素類縁体と比べて項間交差が効率的に起こり、その結果として蛍光量子収率が減少することを見出した。また2段階レーザーホトリシス法により9-シラフルオレン誘導体では、三重項状態を経由する2光子過程によりそのカチオンラジカルが生成することを、また9,10-ジヒドロ-9-シラフェナントレン誘導体では三重項状態を経由して、9-シラフェナントレンが生成することを明らかにした。 2)1,2-ジフェニルジシランの両末端フェニル基の4位に電子供与性のメトキシ基と吸引性のシアノ基を置換したケイ素化合物では、電荷移動励起状態からの発光が観測され26debyeと大きな双極子モーメントをもつ励起状態が存在することを見出した。これよりSi-Si結合を通して2つの芳香環のπ電子系が強く相互作用できることを明らかにした。 3)ニトロアゾベンゼンやシアノアゾベンゼンを側鎖に導入したポリメチルフェニルシランにおいて、アゾベンゼン基を光励起するとトランス体からシス体への光異性化が起こり、それに伴ってケイ素主鎖の構造が、ヘリックス型からランダムコイル型の配座へと変化することを明らかにした。また、逆の過程を加熱により誘起することができることを明らかにした。 4)その他、ベンジル化合物などの関連物質の励起状態動力学を明らかにした。
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