研究概要 |
本年度は、主に(1)波形成形のダイナミックレンジを広げるための現有の再生増幅フェムト秒レーザーシステムの出力パルスの圧縮と,(2)ニッケルやゼオライト表面上での吸着分子の反応ダイナミクスの観測・解析を行った。 (1)再生増幅器の出力パルスの時問幅を現在の約130fsからさらに狭める(目標時間幅60fs)ために,BBO結晶(8mm×8mm×20mm)を用いたカスケード2次非線形効果によりスペクトル幅の拡張とその後でのプリズム対と波形整形器を用いた回帰的な群速度分散補償を行った。現在のところ,まだ100fs前後までしかパルス圧縮が達成されておらず,目標時間幅までは到達していない。十分に圧縮されない理由としては,レーザービームのビームパターンの影響,光源の位相の乱れ,BBO結晶の位相整合条件のズレなどが考えられ,現在原因の究明を進めて更なる圧縮を試みている。 (2)分子の吸着した固体表面に超短パルスを照射した場合の,分子のダイナミクスを実時間で観測した。その結果,蟻酸イオン種が吸着しているニッケル表面に近赤外パルスを照射した場合は,過渡的に吸着構造が変化することを明らかにした。また,イソブテンやトランス-2-ブテンといったオレフィン類を吸着させたゼオライトにおいて,表面に存在する水酸基の振動を励起すると,低温においても反応を起こすことを明らかにした。また,その反応の過渡種の観測に成功した。
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