流通型高温高圧NMR装置の開発と超臨界水中の化学反応の解明

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15350011
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 梶本 興亜 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (30029483)
• 研究分担者: 原 公彦 京都大学, 低温物質科学研究センター, 教授 (80025436) ; 竹腰 清乃理 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (10206964)
• キーワード: 流通型NMR / 高温高圧NMR / Claisen転位

研究概要

本年度の目標は、超臨界水中の化学反応を調べるための「流通型高温高圧NMR装置」の完成と改良であり、特に、低速流通における温度制御であった。典型的な反応として1次速度式に従うアリルフェニルエーテル(APE)のClaisen転位を採りあげ、1次反応式に従う反応の進行が見られるかどうかを検証しつつ、温度制御を工夫した。
混合点(すなわち超臨界状態となる時間ゼロの点)から測定点までの温度が均一であれば、流速を変えることによって測定点までの反応時間を変え、速度の1次プロットをとることが出来る。当初は時間に対するln[APE]のプロットが曲線となり、混合あるいは温度制御に問題があることを示していたが、3点の温度制御を行うように改良することによって、綺麗な直線のプロットが得られるようになった。すなわち、混合点周辺の温度制御と下流からの高温窒素ガスフローによる温度制御に加えて、試料管直上での温度制御を行うことによって問題が解決した。また、完全な1次プロットが得られたことにより、混合の不完全や、流速変化よる温度ゆらぎの危惧も、問題が無いことが判明した。
300℃以上の高温水においては、APEのCloisen転位に対する反応速度定数と活性化エネルギーに対する情報がなかったが、これらを本装置によって評価し、反応の溶媒効果に対する考察を加えた。
次の段階として、さらに遅い流速あるいはstopped-flow条件下で温度を一定に保つように改良を加える。また、高速流通に対処するために、混合に関してもさらに検討する必要がある。とくに、流通速度と緩和時間の関係を詳細に解析することが必要である。

研究成果

• [文献書誌] Amita, F., Oka, H., Mukaide, M., Urasaki, Y., Takegoshi, K., Terao, T., Kajimoto, O.: "Development of a high-temperature and high-pressure nuclear magnetic resonance probe for studies of chemical reactions in supercritical water"Rev.Sci.Instrum.. 75(2). 467-471 (2003)
• [文献書誌] Arita, T., Kajimoto, O.: "formation and decay of an aromatic vinyl cation in supercritical CF_3H"J.Phys.Chem.A. 107(11). 1770-1775 (2003)
• [文献書誌] Arita, T., Nakahara, K., Nagami, K., Kajimoto, O.: "Hydrogen generation from ethanol in supercritical water without catalyst"Tetrahedron Letters. 44. 1083-1086 (2003)
• [文献書誌] Itami, K., Terakawa, K., Yoshida, J., Kajimoto, O.: "Efficient and rapid C-Si bond cleavage in supercritical water"JACS. 125. 6058-6059 (2003)
• [文献書誌] Oka, H., Kajimoto, O.: "UV absorption solvatochromic shift of 4-nitroaniline in supercritical water"Phys.Chem.Chem.Phys.. 5(12). 2535-2540 (2003)
• [文献書誌] Sekiguchi, K., Shimojima, A., Kajimoto, O.: "Intramolecular vibrational redistribution of CH_2I_2 dissolved in supercritical Xe"Chem.Phys.Lett.. 370. 303-308 (2003)