研究課題/領域番号 |
15350012
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
榊 茂好 京都大学, 工学研究科, 教授 (20094013)
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研究分担者 |
佐藤 啓文 京都大学, 工学研究科, 助教授 (70290905)
中尾 嘉秀 京都大学, 工学研究科, 助手 (40362462)
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キーワード | 電子状態理論 / 混合原子価錯体 / 錯体触媒反応 / 反応機構 / 遷移状態 / 触媒サイクル / 電子状態制御 |
研究概要 |
遷移金属錯体は工業触媒から生体内金属酵素までの幅広い領域での触媒や電子材料や光化学材料として重要な位置を占めているが、それらの機能は遷移金属錯体が多様な構造、電子状態、反応性を示すことと深く関連している。今年度は、それらに関連して、ルテニウム錯体による触媒的な二酸化炭素の水素化反応を理論的に検討し、水分子が配位していない場合は二酸化炭素のRu-H結合への挿入反応、ギ酸錯体の異性化、分子状水素とのメタセシスで進行すること、水分子が配位している場合は、ヒドリドの二酸化炭素への求核付加を経て進行すること、この過程は数kcal/molのわずかな活性障壁で進行すること、この過程には水分子との水素結合が重要な安定化相互作用として関与していることを明らかにした。また、遷移金属-C_<60>錯体の理論的検討を行い、DFT法は結合エネルギーを過小評価すること、これまで報告されていた結合エネルギーよりもはるかに大きな結合エネルギーであること、ONIOM法で精度良く結合エネルギーが評価出来る事を明らかにした。混合原子価錯体についても理論的研究を行い、電子状態の局在・非局在性を検討し、架橋配位子が芳香環1つのビピラジンの場合は中心金属がRuでもOsでも、また、真空中でも極性溶媒中でも電子状態が非局在化しているが、ビピリジンになると、Ruでは局在化電子状態になること、Osでも架橋配位子の2面角が非平面になるに従い、非局在電子状態に変わることを明らかにした。これらの結果は分子素子を構築する上で基礎的・重要な知見である。
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