研究概要 |
1.トランス-グリオキザールのA ^1A_u(nπ^*)状態は、準位間摂動は無いとされていたが、我々はa ^3A_u(nπ^*)状態との準位間相互作用を証明するエネルギーシフトと超微細構造を示す強度の弱いスペクトル線を観測した。超伝導磁石(最大6T)のボーア内にドップラーフリー2光子吸収分光用光共振器を設置し、A ^1A_u(v_7=1,JK)←X ^1A_g遷移のゼーマン分裂の量子数JとK依存性を調べ、従来の手法では観測出来なかった分子の量子化状態・準位間相互作用を明確にした。 2.ベンゼンのS_1 ^1B_<2u>状態は基底振動状態からの発光量子収率が0.22であり、S_1 ^1B_<2u>、からT_1 ^3B_<1u>、への項間交差(intersystem crossing)が生じているとされているが、実験的な確証は得られていない。本研究でドップラーフリー2光子吸収分光法、レーザー光・分子線交差型サブドップラー分光法によるスペクトルを測定し、その外部磁場による影響の量子数v, J, K依存性を調べた。その結果、一重項-三重項相互作用は微少で、分子内無輻射遷移はS_1状態における振動・回転相互作用を経て、S_1からS_0への分子内変換(internal conversion)により生じていることを明確にした。 3.ナフタレンのS_1 ^1B_<1u>←S_0 ^1A_g遷移の高分解能分光スペクトルを測定し、正確な分光定数を決定すると共に、準位間相互作用の量子数v, J, K依存性、スペクトルの外部磁場による影響を調べた。その成果に基づいて、分子内無輻射遷移・分子内エネルギー移動の機構を解明した。 4.パラジベンゾジオキシンのS_1←S_0遷移の各振電バンドのレーザー光・分子線交差によるサブドプラー分光スペクトルを測定し、正確な分光定数を決定すると共に、バタフライ振動とトンネル効果の機構を明確にした。
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