研究課題/領域番号 |
15350015
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
関谷 博 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (90154658)
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研究分担者 |
大橋 和彦 九州大学, 理学研究院, 助教授 (80213825)
迫田 憲治 九州大学, 理学研究院, 助手 (80346767)
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キーワード | 生体関連分子 / 水素結合 / ダブルプロトン移動 / 孤立状態 / エキシトン相互作用 / 協同効果 / 7-アザインドールダイマー / 電子スペクトル |
研究概要 |
7-アザインドール2量体および重水素置換体7AI_2-hh、7AI_2-hd、7AI_2-dd(hd、ddは、それぞれNH基のH原子の1個または2個の重水素置換を示す)の分散蛍光(DF)スペクトルの測定から、ESDPT速度のH/D同位体効果について調査した。7AI_2に1個のD原子が導入されるとk_<PT>が約1/60に減少するが、さらにD原子が導入されてもk_<PT>は約1/12にしか減少しない。このようなD原子の置換数に対するk_<PT>の非線形的な減少から、7AI_2のESDPTの協同性を見い出した。さらに、7AI_2のESDPTが協奏的機構で進行していることを明らかにした。 (3-メチル-7-アザインドール)-(7-アザインドール)ヘテロダイマー[3MAI-7AI]のFEスペクトルを測定し、3MAI-7AIヘテロダイマーにおいてもESDPTが生じることを示した。7AI_2及び3MAI_2では最低電子励起状態においてエキシトン相互作用が存在するのに対して、3MAI-7AIヘテロダイマーではエキシトン相互作用が存在しない。しかしながら、FEスペクトルに観測された3MAI-7AIヘテロダイマーの振電構造及びバンド幅は、これらと対応する7AI_2及び3MAI_2の振電構造及びバンド幅に極めて類似していることから、最低電子励起状態における7AI_2及び3MAI_2のエキシトン相互作用は、これまでに提案されている"strong coupling case"ではなく、より弱い相互作用である"weak coupling case"であるために、ESDPTに対して殆ど影響を与えないことを発見した。 以上の成果は、激しい論争にも拘わらず、明確な結論が得られていなかった7AI_2のESDPT機構に最終的な結論を与えるだけでなく、最低励起状態におげる2つのモノマーユニットのπ電子系の相互作用に対して、正しい描像を与えるものである。
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