研究概要 |
1.分子の内殻電子をイオン化すると放出電子は分子内で散乱されて放出される。本研究では分子軸を固定したCO_2分子から放出されるO1_s内殻光電子の角度分布を観測し、N_2の場合と異なり細かい構造がないことを見出した。[J.Phys.B36,L25(2003);AIP Conf.Proc.652,172(2003).]実験は、現有の電子・イオン同時計測運動量分析装置を用いてSPring-8の共同利用実験として行った。 2.基底状態で直線3原子分子であるCO_2分子のC1_s電子を最低非占有分子軌道(LUMO)に励起すると、対称性を破る核の運動が引きおこされたことが推測される。本研究では、C1_s励起に続いて、多重オージェ過程が起こり、クーロン爆発により、C^+,O^+,O^+の3個の解離イオンすべての運動量を同時測定することにより、分子の変形することを捉えることに成功した。[AIP Conf.Proc.652,172(2003).]実験は、現有の電子・イオン同時計測運動量分析装置を用いてSPring-8の共同利用実験として行った。 3.フルスケール32μs、時間分解能100ps、マルチヒット検出・コモンストップモードでの使用が可能な16チャンネル超高速時間計測システムを開発した。このシステムを用いて、電子・イオン同時計測運動量分析装置の電子エネルギー分解能のテストを行った。電子のエネルギー分解能が向上し、振動準位の分離が可能であることがわかった。 4.2段のスキマーと2段差動排気を備えたサブミリ超音速公子ビーム源および、光電子・イオン同時計測運動量イメージ測定用のアナライザーを設計製作した。現在、実験室で動作テストを行っている。16年度にこの装置をSPring-8に持ち込み、CO_2や希ガスクラスターを対象として、電子・イオン運動量同時計測実験を行う。
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