研究課題
ポルフィリンよりもサイズの大きい環拡張ポルフィリンは、複数の遷移金属を取り組む可能性があり、実際、ピロール8個からなるオクタフィリンは銅2価イオン2つと錯体を形成した。この錯体の溶液を加熱すると、2つのポルフィリンに分裂することを見出し、我々はこの現象を分子細胞分裂と名付けて報告した。この変化は大きな吸収スペクトルの変化を伴うために、記憶素子としての利用が考えられる。そこで石英基板上にスピンコート法でフィルムを形成し、熱を加えて吸収帯が変化することを確認した。今後はレーザーなどを用いて記録素子としての可能性を探る。複核錯体を形成する環拡張ポルフィリンの、金属を並べるプラットホームとしての性質も見逃せない。オクタフィリン銅2核錯体のほかに、ピロール環10個からなるデカフィリンの銅3核錯体を単離し、X線結晶構造解析によって構造決定した。中央の銅イオンは2価であると考えているが、これが正しければ、きわめて珍しい2配位の銅2価錯体の単離ということになり、現在慎重に解析を進めている。また、ヘキサフィリンが金イオンを取り込んで、平面2核錯体を生成することも明らかにした。更に大きな環拡張ポルフィリンを得ることを目的として、ピロール環3個からなるトリピランから直接環化反応を試みた。ねらいどおり、3の倍数のピロールで構成された環拡張ポルフィリンを得ることができ、このうち6、9、15個のピロールからなる拡張ポルフィリンに関してはX線で構造を決定するに至った。ジプロトン化ルビリンは、対アニオンの構造に依存した異なった構造を取り、吸収スペクトルも変化する。このため、アニオンセンサーとしての有望であることを示した。
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