研究概要 |
複数の酸化還元活性な端末を含む有機π共役系は分子ワイヤーとしての性能を示すことが明らかにされてきた。本研究では旧来の一次元構造のπ共役系部分を多次元化すること、また多機能化することを目的として研究を行っている。なお金属フラグメントとしては鉄種[Fe(η^5-C_5Me_5)(dppe)]を用いた。 多次元化については、エチレン骨格に四つの金属フラグメントを結合させることを目的として途中にアセチレンユニットを含む系の合成を試みた。C≡C,C≡C-C≡Cで繋がれた系ではフラグメントの立体障害のためトランス位の二つの部分しか金属フラグメントが導入されなかったが、C_6H_4-C≡Cリンカーを含む系では四置換錯体が得られた。 得られた四核錯体は分子ワイヤーとしては有効ではなかったが、これは機能発現のためには途中の芳香族環の方向族性を破壊する必要があるためと炭素鎖長が長すぎることが原因であると結論した。一方前半の二核錯体については、電気化学測定及び一電子酸化種の近赤外領域に観察されるintervalence charge transfer bandに基づいて詳細な機能評価を行った結果、優れた分子ワイヤーとしての機能を示すことが明らかとなった。この結果に基づいて様々な修飾を施して構造と機能の相関を調査した結果、1)炭素鎖長が長くなると機能が低下する、2)電子供与性の置換基が性能を向上させること、3)多様な修飾が可能なオレフィンリンカーがアセチレンリンカーと同程度の性能を発揮することなどを明らかにした。
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