研究概要 |
1、三座型ヒドロシラン(2-SiH_3C_6H_4)_2SiH_2を用いたケイ素-10族遷移金属錯体の合成 三座型の標記ヒドロシランと0価10族遷移金属錯体との反応を検討した。ニッケル錆体Ni(PEt_3)_2、(Et_2PCH_2CH_2PEt_2)との反応において、溶液中および結晶中で異なる構造を示す興味深いシリルニッケル錯体が生成することを見出した。この錯体は単結晶X線構造解析により、結晶中ではη^2-(Si-H)Ni構造を持つ初めての例となるビス(シリル)η^2-(Si-H)ニッケル錯体であることが明らかとなった。一方、溶液中では、温度可変多核NMRおよび理論計算により4価Ni-H構造を持つ初めての例となるトリス(シリル)ヒドリドニッケル錯体であることを明らかにした(これらの成果はJ.Am.Chem.Soc.誌に投稿中)。一方、ホスフィン配位子をより嵩高いものにした場合、ヒドロシランの分子内反応によりSi-Si結合がニッケル錯体上で形成されることを明らかにした。 2、三核ヘキサシリルパラジウム錯体の反応性の解明 三核ヘキサシリルパラジウム錯体の大量合成を行い、ヒドロシランとの反応について検討を開始した。1,2-C_6H_4(SiH_3)_2との反応でテトラシリルパラジウム錯体の生成が確認し、さらに詳細を検討中である。 3、非対称二座型ヒドロシラン1,2-C_6H_4(SiH_3)(SiMe_2H)と10族遷移金属錯体との反応性の解明 Ni錯体触媒による1,2-C_6H_4(SiH_3)(SiMe_2H)の脱水素2量化反応を検討し、生成物の構造を各種スペクトル解析により同定を試み、さらにX線構造解析を検討中である。また、白金錯体との反応では、μ-シリレン架橋2量体が容易に生成することを見出した。さらにこの2量体の反応性を検討したところ、わずかな水が存在すると4員環ジシロキサン構造をもつ白金錯体が生成することが分かった。
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