研究概要 |
1.非対称二座型ヒドロシラン1,2-C_6H_4(SiH_3)(SiMe_2H)と10族遷移金属錯体との反応性の解明 標記ヒドロシランと白金錯体Pt(dmpe)(PEt_3)_2(dmpe=Me_2PCH_2CH_2PMe_2)との反応により生成するμ・シリレン架橋二核四価白金錯体の反応性を検討した。この錯体は溶液中では容易に単核二価白金錯体[{1,2-C_6H_4(SiH_2)(SiMe_2)]}Pt(dmpe)]に解離し、二核錯体との間に平衡が存在する。この平衡混合物を60℃以上に加熱すると^<31>P-NMRにおいて4種類の異なるシグナルを与える新規複核錯体が生成することを見出した。この錯体は単結晶X線構造解析により、前例の無いμ・シリレン架橋二核三価白金錯体であることが分かった。 2.三座型ヒドロシラン(2-SiH_3C_6H_4)_2SiH_2を用いたケイ素-10族遷移金属錯体の合成 標記ヒドロシランとNi(R_2PCH_2CH_2PR_2)(PEt_3)_2との反応では、ホスフィン配位子上の置換基Rがエチル基の場合四価シリルニッケル錯体が生成し、嵩高いシクロヘキシル基の場合にはヒドロシランの分子内Si-Si結合生成が進行する。そこでこの置換基の効果をさらに詳細に検討した。Ni(PEt_3)_4との反応では-50℃以下で四価錯体が生成した。この錯体に-50℃でdmpeを反応させると速やかにホスフィン配位子の交換が起こり四価構造は維持された。一方dcpe(=Cy_2PCH_2CH_2PCy_2,Cy=シクロヘキシル)を反応させた場合には、dcpeを持つ四価錯体は観測されず、ホスフィン配位子の交換が起こるとともにSi-Si結合を持つ二価錯体の生成が確認された。この結果は、嵩高いホスフィン配位子が立体効果により四価錯体上でのSi-Si結合生成を促進させることを示唆している。
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