研究概要 |
独自に開発した二座及び三座キレート型ケイ素配位子前駆体であるヒドロシランを用い、ケイ素一遷移金属錯体の基礎化学の解明及びケイ素-ケイ素結合生成反応の触媒開発を目指し10族遷移金属錯体に焦点をあてて検討した。その結果、ケイ素-10族遷移金属錯体の化学が予想を超えた多様性を持つことを示すとともに触媒開発に重要な知見を得ることに成功した。以下、主な成果を列挙する。 ・三座型ヒドロシラン(2-SiH_3C_6H_4)_2siH_2と10族遷移金属錯体との反応が、金属の種類や配位子の立体的影響に応じた多様性を示すことを明らかにし、多数の新規シリル錯体を単離し、構造を明らかにした。ニッケル錯体との反応においては、溶液中では四価ニッケルヒドリド構造を、結晶中では二価η^<2->(Si-H)Ni構造を有する世界初の錯体を単離し、X線構造解析や理論科学計算により構造を明らかにした。 ・二座型ヒドロシラン1,2-C6_H_4(SiMe_2H)(SiH_3)とパラジウム錯=体との反応において、世界初となる5つのケイ素原子が結合したパラジウム中心を含み、5価ともいえる形式酸化数を有する三核および四核パラジウム錯体の単離・構造解析に成功した。 ・二座型ヒドロシランと白金錯体との反応において、前例の無い反応によりシクロジシロキサン構造を有する二核白金錯体が生成することを見出した。 ・二座及び三座型ヒドロシランと10族遷移金属のホスフィン錯体との反応においては、ホスフィン配位子及びヒドロシランの立体的効果が反応に極めて大きく影響し、立体障害が小さい場合には複核錯体や高形式酸化数錯体が容易に生成することを明らかにした。一方、立体障害が大きい場合にはケイ素一ケイ素結合生成反応が進行しやすいことを見出し、触媒開発に重要な知見を得た。
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