本年度はキャピラリー-マイクロチップ統合システム構築のための基盤技術開発として、次の項目を実施した。 (A)矩形キャピラリー結合マイクロチップを用いた電気泳動分析の基礎検討 (B)温度応答性ポリマー修飾キャピラリーと小型ペルチェ素子を用いた試料導入バルブ機能チップの開発 (C)希薄試料の濃縮が可能なモノリスポリマーを集積した濃縮チップの開発 (A)矩形キャピラリーの一端にマイクロチップを結合させ、電気泳動分析用マイクロチップを試作した。試料導入ポンプの制御に基づく分離キャピラリーへの試料注入法を検討したところ、ポンプ流量の時間間隔を制御することによって、試料注入・電気泳動分離ができることを確認した。 (B)温度応答性ポリマーを矩形キャピラリー内に作製した。これを実際にチップに埋め込んでペルチェ素子による温度制御に基づく流体制御を試みたところ、従来用いられていた電熱線に基づく制御法と比較して、極めて迅速な制御が可能であることがわかった。また、本法は複数のバルブを1枚のチップに組み込むことも可能であるため、実際に2つのバルブキャピラリーを組み込んでチップを試作したところ、一定体積の試料溶液切り取りバルブとしても有効に機能することがわかった。 (C)アルキル基を側鎖に有するモノリスポリマーをキャピラリー内に作製し、チップに埋め込むことによって、濃縮機能チップを試作した。疎水性相互作用に基づく試料濃縮の基礎的検討を行った結果、試料水溶液の導入に基づく吸着濃縮・有機溶媒を用いた溶離が可能であることが確認され、蛍光分子を用いたモデル実験では数百倍におよぶ試料濃縮が可能であることがわかった。 次年度、これらの機能キャピラリーを有するマイクロチップを試作し、電気泳動分離キャピラリーと統合することで、前処理集積電気泳動分析チップとしての機能を検証する。
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