研究概要 |
本年度は、昨年度開発した基盤技術を踏まえ、下記の2項目を実施した。 (1)多層流を活用した除タンパク前処理集積チップ (2)酵素反応キャピラリーを埋め込んだタンパク分解前処理集積チップ (1)角型キャピラリーを格子状PDMS基板に埋め込み、多層流を活用した除タンパク前処理チップを作製した。チップ内のT字流路に試料(フルオレセイン修飾牛血清アルブミン(F-BSA:M.W約70600)、ローダミンB(RB)、スルホローダミン(SR))を含む緩衝液と含まない緩衝液を導入・合流させ、多層流基づく除タンパクの基礎検討を実施した。その結果、両方の流量が0.5μl/mの時にRBとSRのみが拡散分離され、電気泳動(CE)キャピラリーへ導入可能であることが分かった。次に試料溶液がCE分離キャピラリーと直接触れないように緩衝液を1μl/mで導入し、そのポンプのON/OFFによる試料導入・CE分離(印加電圧:5kV)を試みた。その結果、前処理を行わない場合、RB, SRに加えてF-BSAのブロードなピークが見られたのに対し、前処理を行った場合はRB, SRのみのピークが見られ、除タンパク前処理の集積化が実現可能であることが分かった。また長いCE分離キャピラリーを用いることで、除タンパクされた低分子量成分の分離が改善され、泳動時間の再現性も良好であった。 (2)トリプシン固定化キャピラリーを作製し、タンパク質のボトムアッププロテオミクスに適用可能なチップの試作を試みた。キャピラリー内にモノリス構造を作製後、トリプシンを固定化した。蛍光ラベル化BSAを導入したときの、タンパク分解挙動の流量依存性をCEによって評価したところ、流量が遅くなるほどペプチド量は増えたものの、ペプチドへの分解効率は低かった。これは酵素の固定化量が足りないことに起因すると考えられるため、現在、固定化方法の検討を進めている。
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