研究課題
基盤研究(B)
我々は、マイクロメートルサイズの微粒子に関してレーザー光泳動速度の実験的、理論的解明を進めてきた。しかし、微粒子が光を吸収する場合には、光熱変換により微粒子周囲の媒体分子の異方的な運動変化やミクロな組成変化や相分離が加わり、泳動速度の変化や泳動方向の逆転など複雑な挙動を呈することを発見した。また、マイクロエマルション液滴微粒子において、泳動に伴い周期的膨張収縮現象が起こることも見出した。このような光泳動と光熱変換現象が協同的に作用する新しい物理化学現象を実験的に解明し、これを液中微粒子の新規な泳動法へと発展させることを目的として研究を行った。具体的には、以下の点について重点的に研究を行い、その成果を得た。1.光吸収性マイクロエマルション液滴のレーザー光泳動における周期的膨張収縮挙動の詳細な実験的検討とその機構の解明:マイクロエマルションの膨張過程にSoret効果による相分離、熱浸透現象が関与していることを明らかにした。2.レーザー照射下における光吸収性単一有機液滴に働く作用力の反転現象解明のための液滴内温度分布の顕微蛍光測定:水中の光吸収性液滴内のレーザー照射時の温度分布を明らかにし、反転光泳動現象の原因を明らかにした。3.血球細胞分離のための光熱変換レーザー光泳動分離法の検討:血球細胞のレーザー光泳動挙動を詳細に検討し、赤血球のみを他の血球細胞から分離する方法を提案した。4.光吸収性有機液滴のレーザー光泳動挙動有機溶媒-ガラス界面におけるレーザー照射点からの気泡の発生とその挙動:レーザー照射による気泡の発生とトラッピングという新現象を発見した。5.有機溶媒中での水滴の光泳動挙動:水が吸収をもつ波長のレーザーを用いて、水滴、水溶液液滴のレーザー光泳動挙動を観測し、これを詳細に解析した。
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