これまではDNAあるいはペプチドをスフェア表面に修飾する際に、それらの分子にあらかじめ導入した一級アミノ基をカルボジイミド系の縮合剤を用いてスフェア表面のカルボキシル基に直接カップリングしていた。この方法では特にDNAの場合、縮合剤であるカルボジイミドが塩基を修飾するため、その濃度を一定以上に上げることができず、結果としてDNAの導入量を向上させることが困難であった。そこで、間接的な手法を用いることにより、縮合剤とDNAとが接触することがないようにした。すなわち、一旦、シスタミンをスフェア表面に修飾することでスフェア表面にチオール基を導入した。これとは別に固定化したいDNAやペプチド末端には二価性試薬を用いてチオールと特異的に反応することが知られているマレイミドを導入した。両者を室温で混ぜることで目的とするDNA、またはペプチド修飾スフェアを高効率で調製することができた。また、このときスフェア上に導入されたチオール基の量は時間とともに減少することが確認されたが、これは隣り合うチオール基との間でジスルフィド結合が生じるためであることが示唆された。そこで、スフェアへのチオール導入後は、分散溶液中にEDTA(10mM)を入れ、さらに溶液をアルゴンガスで飽和させた後に密閉保存することでチオール基の寿命を格段に長くすることができた。 イムノアッセイに供するベプチド固定化スフェアを上記改良法にて調製した。修飾ペプチドのリンカー構造について種々検討した結果、修飾率、スフェアの分散性の観点からはアニオン性のリンカーが良いことがわかった。赤いスフェアにFAKとc-Mycペプチドを、緑のスフェアにはc-Mycとα-cateninペプチドを固定化して、FAK、c-Myc、α-cateninに対する3種の抗体を同時に分析可能な多色アッセイ系を構築することができた。
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