研究概要 |
前年度には多成分試料の例として細胞内代謝物をとりあげ、ミクロ液体クロマトグラフィー(μ-LC)-キャピラリー電気泳動(CE)による2次元分離システムにより多成分を一斉分析する方法の開発を行った。この場合にはμ-LC溶出液を一定量ずつ分画し、各分画をCEによりオンライン試料濃縮法して分離する方法を採用した。細胞内における代謝物濃度が低い化合物が多いので、さらに高感度に分析するために、μ-LCにおいてもオンライン試料濃縮を行うための研究を行った。LCにおけるオンライン試料濃縮法としてはグラジエント溶離法を利用する方法と、オンライン固相抽出カラムを用いる方法があるが、両方法について検討した。カラムには内径200μm,長さ50cmのオクタデシルシリル修飾(ODS)シリカモノリスカラムを用いた。オンライン固相抽出カラムには分離カラムと同じODSシリカモノリスカラムで長さ15cmのものを用いた。モデル試料としてフラビン補酵素である、リボフラビン、フラビンモノヌクレオチド(FMN)およびフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を用いた。どちらの方法でも110倍程度の濃縮が可能であった。この方法を大腸菌細胞内のフラビン補酵素の分析に応用した。大腸菌中でのFMNおよびFADの濃度はどちらもサブμg/mL程度であり、精度よく測定できた。さらに組み替えDNAを用いたフラビン酵素から遊離したFMNとFADの濃度比の測定も可能なことを示した。前年度開発のμ-LC-CEシステムに質量分析計(MS)を検出器として用いる場合を想定して、CEの泳動液に揮発性の成分を用いる研究も行った。118種の代謝物モデル化合物の混合物を試料に用い、二次元分離条件の最適化を試みた。CEの泳動液には炭酸アンモニウムを用いた。118種の化合物中には紫外吸光のない化合物も多数含めたため、紫外吸光検出器では全部の化合物を検出することはできないが、検出成分の数が最大となるように条件設定した。このシステムにより、枯草菌細胞抽出液中に、前年度のシステムよりも9種多くの成分を検出できた。
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