本研究の最終年度に当たるので、これまでに開発したミクロ液体クロマトグラフィー(LC)とキャピラリー電気泳動(CE)を組み合わせた二次元LC-CEシステムの実証実験を行った。二次元LC-CEシステムは昨年度報告したものにほぼ同じであるが、シリカモノリスカラムに内径0.2mm、長さ50cmのものを用いた。試料には大腸菌(E.coli BL21)を2×YT培地で培養し、菌のみを単離後菌体内の代謝物を抽出した。システムの分離性能を確認するために代謝物標準試料118種を含む混合物の分離も、大腸菌抽出物の分離と併行して行った。代謝物標準試料には紫外吸収の弱い化合物も多く含まれるので、254nmでの吸光検出では63種の化合物が分離同定できた。大腸菌抽出物の二次元LC-CEでは60種以上のピークが観測され、そのうち26種はアミノ酸、ヌクレオチドなどの広く分布する代謝物と同定できた。この方法の検出限界は化合物に大きく依存するが、2-183ng/mL(12-1090nM)であった。移動時間及びピーク面積の再現性(RSD)は5%以下であった。本研究では二次元目に質量分析計(MS)を検出器に利用するCE-MS実験まではできなかったが、MS分析に必要な揮発性電解質を用いる泳動液の利用についても検討した。 マイクロチップ電気泳動を用いた超微量分析法についても研究を行った。当研究室で以前に開発したポリジメチルシロキサンを用いて作成したマクロチップ電気泳動-化学発光検出を利用して、大腸菌中の高感度ATP分析を行った。検出にはホタルルシフェリン-ルシフェラーゼ生物発光を利用してATPを検出した。対数増殖期にある大腸菌を単離し、マクロチップに移し、マイクロチップ上でトライトンX-100で細胞を溶解させ、細胞内に含まれるATPを電気泳動で分離後生物発行により検出した。大腸菌1個当たりのATP量は1.62amolであった。濃度としては1.6μMであった。
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