多数成分を一斉に効率よく分離定量する方法として、液体クロマトグラフィー(LC)とキャピラリー電気泳動(CE)とを組み合わせたLC-CE二次元分離法の確立を目的に研究を行った。2段目のCE分離にマルチキャピラリー電気泳動装置を利用するつもりであったが、装置の不調で利用をあきらめ、2段目はすべて1本のキャピラリーを用いる通常のCEにより実験を行った。1段目の分離に内径200μm、長さ25cmまたは50cmのモノリスシリカゲル逆相カラムにグラジェント溶離法を採用したミクロ逆相LCを、2段目のCEには内径50μm、有効長50cmのキャピラリーを用いた。試料には細菌内の代謝物を分析する目的で、代謝物と予想される標準化合物54種または118種の混合物と、枯草菌または大腸菌細胞抽出液の両方を用いた。ミクロLC溶出液を2μl(1min)毎に分取し、24分画に分けた。各分取分画を減圧下で溶媒を蒸発させ、残遭をCEに適した溶媒に溶解した。ミクロLCの初期の溶出物は極性の高い化合物なので、ダイナミックpHジャンクションによるオンライン試料濃縮と組み合わせたキャピラリーゾーン電気泳動分離を行った。LCからの遅い溶出物は疎水性が高いので、スウィーピングと組み合わせたミセル動電クロマトグラフィーにより分離した。この方法により標準化合物54種は完全に分離できた。118種の場合には紫外吸収の弱い化合物も含むので、63種が同定できた。枯草菌細胞抽出液については多数成分が分離できたが、感度が不十分で検出できた成分数は予想より少なかった。大腸菌抽出物では60種以上のピークが観測され、そのうち26種はアミノ酸、ヌクレオチドなどの広く分布する代謝物と同定できた。 ミクロLCカラムによる固相抽出を用いたミクロLCによるフラビン補酵素類の高感度分析も検討し、大腸菌細胞内のフラビン補酵素類の分析に応用した。大腸菌中でのこれら補酵素類の濃度はサブμg/mL程度であり、精度よく測定できた。マイクロチップ電気泳動-化学発光検出を利用して、大腸菌中の高感度ATP分析を行った。
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