本年度の研究実績の概要は以下のようである。 1.バイオ素子および脂質膜を用いるその場測定法として、逆行性神経伝達物質の候補のひとつであるアラキドン酸を選択的に検出する方法の開発を行った。アラキドン酸は平面脂質二分子膜と選択的に相互作用することが見出された。その応答はチャンネル型のイオン輸送によることがわかった(Anal.Sci.)。この現象に基づく生体膜センサーは、マウス海馬スライスでL-グルタミン酸刺激により生成するアラキドン酸を検出できる(投稿中)。 2.神経伝達物質のL-グルタミン酸を検出する超微小キャピラリーセンサーの開発を行った。先端径が2μm程度のガラスキャピラリーセンサはマウス海馬スライスにおいて放出されるL-グルタミン酸を毛管現象にもとづいてサンプリングできる。脳の各領野その場で検出が可能なセンサーとして機能することを示した(Anal.Sci.).現在、このセンサーを用いて脳内L-グルタミン酸濃度の連続モニタリングを検討している。 3.マウス脳において放出されるL-グルタミン酸を可視化イメージングする酵素膜プレートをグルタミン酸オキシダーゼおよび西洋わさび開発、低酸素状態における海馬でのグルタミン酸放出のイメージングに応用した(Anal.Chem.)。L-グルタミン酸の放出によるフラックスは領野ごとに異なることを示した。 4.脳内グルコース濃度の変化を可視化イメージングする酵素固定ガラスプレートを開発中である。グルコース濃度に依存した応答が得られることが示された。
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