研究課題
基盤研究(B)
本研究では電気的検出磁気共鳴法(EDMR)を用い、半導体材料中の電気的特性に寄与する極微量の常磁性種の検出、電子スピン共鳴スペクトルの観察を行う手法の開発に取り組んだ。本研究で開発した交流バイアス法により、バルク試料と電極間のショットキー障壁などによる影響をキャンセルすることが可能となった。さらに、酸化被膜などの薄い絶縁層を交流変位電流で貫通させられることも実証した。その結果、バルク材料の表面酸化皮膜の除去やオーミックコンタクトを得るための電極形成が不要になり完全な非破壊電気的磁気共鳴検出が可能となった。交流バイアス法では、総合的なS/N比においては課題が残っているが、得られるEDMRスペクトルは従来の手法とまったく同一であることが確認できた。またS/N比が低いのは、高抵抗の試料を比較的高い周波数で計測するため、外来雑音の影響が大きいことが原因であることが判明しており、原理的には従来法と同程度の感度が得られことが示唆されている。さらに、EDMRの計測に必要な静磁場発生、ESR照射のための開放型共振器、観測領域選択法などについても実用的な手法を提案し有効性を実証することができた。また、EDMR信号の実測においても、いくつかの先導的な実験結果を得ることができた。1つは試料に局所的な光によるキャリア励起を行い、EDMR信号を画像化することで、試料の様々なパラメータを調べることが可能であることを示すことができた。もう1つは、紫外発光ダイオードを励起光源とすることで、これまでEDMR法では計測されたことのないバンドキャップが極めて大きい化合物半導体のDMRスペクトルの計測に成功したことである。これらの結果、EDMR法はシリコン半導体素子のみならず、バルクの化合物半導体など広い対象に真の非破壊計測法として利用可能になった。
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