研究概要 |
1.新規0価ルテニウムアクア錯体の合成と構造 安定で単離可能な初めての0価ルテニウムアクア錯体Ru(dimethyl fumarate)_2(1,2-bis(diphenyl-phosphino)ethane)(H_2O)(1)の合成および単結晶X線構造解析に成功した。錯体(1)中の水の酸素原子はキラルであり、ラセミの錯体(1)はキラルカラムを備えたHPLCにより光学分割可能であった。さらに、温度可変^1H NMRとDFT計算により、配位した水分子の回転と反転による2個の水素原子間の位置交換過程を初めて明らかにした。 2.ルテニウム錯体触媒を用いる異種アルキンの共環化三量化反応 Cp^*RuCl(η^4-1,5-cyclooctadiene)[Cp^*=pentamethylcyclopentadienyl]錯体触媒存在下、dimethyl acetylenedicarboxylate、1-decyneおよび3-hexyneの共環化三量化反応が進行し、dimethyl3,4-diethyl-5-n-octyl-o-phthalateが単一の位置異性体として収率44%で得られることを見出した。 3.ルテニウム錯体触媒を用いる異種アルケンの共二量化反応の開発 RuCl_3(2,2':6,2"-terpyridine)または[RuCl_2(benzene)]_2錯体と亜鉛/アルコール還元系触媒を用いた場合は、2-ノルボルネン類とアクリル酸誘導体との高位置および立体選択的共二量化反応が進行し、exo-trans-2-norbornylacrylate誘導体が高収率で得られることを、一方、Ru(η^4-1,5-cyclooctadiene)(η^6-1,3,5-cyclooctatriene)錯体触媒を用いた場合には、2,3-ジヒドロフラン類とα,β-不飽和エステル類との高位置および立体選択的共二量化反応が進行し、2-alkylidenetetrahydrofuran誘導体が高収率で得られることを見出した。
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