研究課題/領域番号 |
15350057
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
南方 聖司 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (90273599)
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研究分担者 |
小松 満男 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (60029197)
大平落 洋二 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (60324810)
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キーワード | 環境調和型有機合成 / 無機多孔質 / シリカゲル / 水中有機合成 / アジリジン / 水溶性求核剤 / 開環反応 / チアゾリジン |
研究概要 |
本質的にシリカゲル表面と有機物質との間には静電的な相互作用が働く。この状態に水が存在すれば、水との静電反発により有機物のシリカゲル表面への吸着が促進され、そこでの反応が期待できる。また、反応場の面積は、従来の水-有機相の界面と比べて格段に広くなり高効率的に反応が進行すると考えられる。従って、水-無機多孔体系による環境低負荷型の有機合成反応が実現可能であると考えた。昨年度は、シリカ-水系を反応場とするアジリジンの合成について精力的に検討し、予想通りの結果を得ることができたので、今年度はアジリジンの開環反応への展開を図った。 ヘキシル基が置換したN-トシルアジリジンにシアン化カリウムを加え水中で加熱したが反応が全く進行しなかった。しかし、この系にシリカゲルを添加したところ、シアン化物イオンにより位置選択的に開環したβ-シアノアミド誘導体を得ることに成功した。中性あるいは塩基性のアルミナ、モレキュラーシーブス、セライト、海砂などの種々の無機物質を適用したが、シリカゲルが最も適した無機多孔体であることが判明した。本反応は、他のアルキル基が置換したアジリジンのみならず、1,1-ジ置換のアジリジンやシクロヘキサンやシクロペンタンが縮環したアジリジンにも適用可能であることを明らかにした。また、本シリカ-水系のアジリジンの開環反応における求核種としてシアン化物イオンだけでなく、アジ化物イオンやヨウ化物イオンにも展開可能であることを提示し、様々な官能基をもつ化合物の水中での合成に成功した。さらに、チオシアン酸カリウムとアジリジンとの反応では、チアゾリジン骨格を構築することもできた。以上のように、本シリカ-水系は、アジリジンの開環反応にも対応できることを明らかにした。
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