有機金属錯体の構造と物性・反応性の瀾関関係を解明することは、新しい合成手法の開発や材料創製にとって鍵となる課題である。本研究の目的は、主としてニッケル、パラジウム、白金の第10族金属の複合核有機金属錯体の合成と構造、物性、反応性の解明を行い、単核錯体には見られない複合核錯体独特の化学的特性を利用した新規触媒反応と材料開発法を確立することである。本年度はこれらの目的を目指した計画を実施し、2つ.の主要な成果を得た。 まず単核2価パラジウム錯体とゼロ価パラジウムの複合化により、配位子置換活性なPd(I)-Pd(I)錯体を合成し、この2核錯体を鎖状共役ポリエンや多環式芳香族化合物と反応させることにより、きわめて新規なサンドイッチ構造を持つ不飽和配位子-ポリパラジウム複合化物を得ることができた。一部のサンドイッチ錯体の単結晶のX線構造解析により、これらの複合化錯体は、不飽和配位子からポリパラジウム鎖への連続する配位結合で組み立てられていることが実証された。次に不飽和カルボニル化合物(共役エノン、共役エナール)が配位するゼロ価パラジウム、白金錯体に対してルイス酸を複合化させると、アルミニウムや硼素原子がカルボニル酸素に配位して新しい型のπ-メタロキシアリル金属錯体が生成することが判明した。一部の複合体はやはりX線構造解析で構造を決定した。またルイス酸の代わりにブレンステッド酸であるトリフリック酸(TfOH)を反応させると、ヒドロキシが1位に置換したπ-アリルパラジウムおよび白金錯体が生成した。
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