研究概要 |
申請者のグループが最近独自に開発した耐久性キラルルイス酸触媒DBFOX/Ph・M^<2+>の特徴を活かして、従来例を見ない「触媒的二重活性化型不斉反応」の開発に成功した。すなわち、共に触媒量のキラルルイス酸触媒とアミン触媒を組み合わせて使用し、それぞれが、求電子剤と求核剤前駆体を別途に活性化する新しいエナンチオマー合成手法である。今年度の成果は以下のようにまとめられる。 ・活性メチレン基をもつ求核剤前駆体としてマロン酸ジエチル、マロノニトリル、シアノアセタート、ニトロアセタート等を用い、環状の活性メチレン化合物としてメルドラム酸、ジメドン、テトロン酸、バルビツール酸等を用いた。 ・求電子剤として2-オキサゾリジノン、2-イミダゾリジノン、3,5-ジメチルピラゾールの不飽和イミドを用いた。 ・キラルルイス酸触媒としてはDBPOX/Phのニッケル(II)アクア錯体触媒などを用いた。 ・アミン触媒としては、立体的に嵩高くて高い塩基性をもつトリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、DBUなどのアミン触媒を用いた。 ・上記の求核剤前駆体と求電子剤との無触媒下でのバックグランド反応を調べた結果、実質的な反応速度での反応の進行は観察されなかった。 ・さらに、キラルルイス酸触媒あるいはアミン触媒を単独で用いた際の反応加速とエナンチオ選択性を調べた結果、これもスムーズな反応進行は認められなかった。 ・両触媒を併用した時には顕著な反応加速が見られ、二重活性化条件がスムーズな反応の進行に必須であることを明らかにした。さらに、この反応条件下で高いエナンチオ選択性が観察されることを見い出した。
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