研究概要 |
本年度はα-ケテニルラジカルの発生と捕捉をラジカルカルボニル化反応系を活用し検討を行った。その結果、以下のようなα-ケテニルラジカルを経る変換反応が新規に見出された。 β-位をブチニル基で置換したアクリル酸エチルと一酸化炭素の反応をヘキサンチオールをメディエーターとし、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を開始剤とした1,5-エンイン類のラジカル反応を行ったところ、対応するα位にチオメチレン基を有し、α'位にエトキシカルボニルメチル基を有するシクロペンタノンが良い収率で得られた。同様な反応をトリス(トリメチルシリル)シラン(TTMSS)をメディエーターとして行ったところ対応するα位にシリルメチレン基を有したシクロペンタノン誘導体が合成出来た。この反応では生成物に対するシリルラジカルの付加を経て開始剤ラジカルとカップリングした副生成物が併せて得られたことから、開始剤を種々検討した結果、BPO(ベンゾイルペルオキシド)がより良い結果を与えることがわかった。これらの反応は鍵段階としてα-ケテニルラジカル種の炭素-炭素不飽和結合によるラジカル的捕捉が含まれる。 つづいてα-ケテニルラジカル種をアセチレンに対するトリブチルスズラジカル種の付加とつづく一酸化炭素の捕捉で発生させこれを分子内水酸基で捕捉する実験を行った。その結果、環化型の二つの生成物を得た。例えば5-ヒドロキシー1-ペンチンを用い、トリブチルスズヒドリドをメディエーターとしたラジカルカルボニル化反応を行ったところ、α位にスズメチレン基を持つラクトンとスズメチル基を有するラクトールの二種類の環状生成物が得られることを見出した。この反応は鍵段階としてα-ケテニルラジカル種の水酸基によるイオン的捕捉が含まれる。
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