研究概要 |
最終年度はα-ケテニルラジカルの発生と分子内、あるいは分子間のアミノ基による求核捕捉をラジカルカルボニル化反応系を活用し検討を行った。その結果、以下のようなα-ケテニルラジカルを経る変換反応が新規に見出された。 末端にアセチレンを有するアミンと、一酸化炭素、トリブチルスズヒドリドを、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)をラジカル開始剤としたラジカル反応条件下で反応させたところ、α位にスタニルメチレン基を有するラクタムとメチレン基を有するラクタムが混合物として得られた。スタニルメチレン基は酸処理により容易にメチレン基に変換可能であり、反応終了後の反応混合物を直接酸処理することでα-メチレンラクタムが良好な収率で得られた。この反応ではα-ケテニルラジカルのアミンによるイオン的分子内捕捉が鍵段階として含まれる。 続いて、α-ケテニルラジカルのアミンによる分子間求核捕捉を試みた。ラジカルメディエーターとしてトリブチルスズヒドリドを用い、末端アセチレン、一酸化炭素、アミンとの反応を行なったところ、α位置換アクリル酸アミドが良好な収率で得られた。本反応は30mol%のトリブチルスズヒドリドを用いた時に最も収率良くアクリル酸アミドが得られた。本反応はイオン的過程を含むラジカル連鎖機構で進行するものと考えられる。ケテニルラジカルのアミンによるイオン的分子間捕捉、それに続くヒドロキシアリルラジカルからオキシアリルラジカルへの1,4-H移動が鍵過程として含まれる。1,4-H移動はこれまでほとんど報告例がないが、ヒドロキシアリルラジカルからオキシアリルラジカルへの1,4-H移動が妥当な反応経路であることを計算化学的手法により確かめた。
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